

小さなボストンバッグを片手に、エントランスロビーに足を踏み入れると、背筋をしゃんと伸ばした制服姿の女性が、「いらっしゃいませ」と笑顔で出迎えてくれた。 ロビーサービスの細川友里恵である。彼女は、ボストンバッグを受け取ると、実にスマートにフロントへ案内をしてくれた。
外は、あいにく急な雨が降ってきたものだから、ロビーには早々にチェックインをしようとする人の姿が増えてきた。 次々やってくる宿泊客に、カウンターの向こうから対応しているのはフロントの星佳那子だ。客の中には、外国人の姿も見られる。が、星は彼らとも実に楽しそうに会話をしている。 プラザでは宿泊客の30%近くが外国人のため、英語や中国語に長けたスタッフが多い。
チェックインを済ませると、先ほど出迎えてくれた細川が、部屋まで案内をしてくれた。 「突然の雨で、大変でしたね。濡れませんでしたか?」とエレベーターの中で彼女が話しかけてきた。 こういう時、 定型文のような会話がスタッフにインプットされていると、 会話が続かない。 しかし、 彼女は「自分の言葉」で話しかけてきたものだから、ついついこちらもつられて話が弾んでしまう。 ささいな会話だが、こういうさりげなさが、ホテルのイメージをグンとアップさせる。
今回の宿泊は、インターネットで見つけたプランで予約をした。 それは、京王プラザホテル札幌が日本全国約22,000施設の中から、昨年一年間で顕著な実績・高い評価を得た宿泊施設を決定する「楽天トラベルアワード2008」北海道地区プレミアムホテル部門において、「金賞」を受賞したことを記念してのプランである。 これ以外にも、プラザには様々な宿泊プランが用意されているのだが、これらを考え、組み立て、ネットを使った販売や予約受付などを担当しているのが、宿泊予約の小林健太郎だ。 彼は、ロビーやフロントに出てきて、直接接客するのではなく、ネットという媒体を通して、メールマガジンなどでコミュニケーションをとっている。
旅先のホテルを選ぶ時、今は多くの人がインターネットを利用するだろう。「楽天トラベル」のような専門サイトを利用したり、直接ホテルにアクセスしたりしながら、自分の都合に合わせたプランを探す。 客のニーズが多様化している分だけ、ネット上にホテルが発信する情報は、常に新しい物が求められ、いかに魅力的なホテル(プラン)であるかを伝えなければ、あっという間に客は他へ流れてしまう。 その入口になる小林のセクションは、それこそ宿泊競争の最前線と言っても過言ではないのだ。 「お客様に満足していただくために、お客様の立場に立ったサービス、ニーズに合ったプラン作成を常に心がけています。 お客様からいただいた意見や感想は、すぐにフィードバックし、“尋ねられた以上に、求められた以上に!”を目指しています」(小林談)。
ネット上では好印象だったのに、実際にホテルに来てみると、そのイメージが崩れてしまう…では、お粗末だ。ネットで与えた以上の好感度を与えて、初めて客の満足度が高まるのだ。だからこそ、ロビーに立つ細川やフロントの星たちの存在が重要になる。 「いつ、どんな時でもプラザらしい笑顔でお客様をお迎えできるロビーづくりを心がけています。プラザで働く“人”に、また会いたいと思っていただけるサービス技術を身につけることが、今の私の目標です」(細川談)。 「お客様の2番目の自宅だと思っていただけるようなプラザでありたい。ゆっくり寛いで疲れを癒し、素敵な思い出をいっぱいつくって、『いい旅行だった』と思っていただける一因になればいいと思っています」(星談)。
いくらレストランやショッピングアーケードが充実していても、ホテルの看板商品はやはり「宿泊」である。 数あるホテルの中から、プラザを選んでもらい、そしてもう一度プラザに泊まりたいと思ってもらえるようなサービスとおもてなしのために、宿泊担当スタッフの努力は、今この瞬間も続いているのだ。
ところで最近、フロントの星は、外国人客から「Hoshi Ichiban」と書かれたメモを受け取ったそうだ。「それを受け取って、どう思った?」と尋ねると、誇らしげに星は答えた。「イチローと並んだ気分です!」と。